「ぬくもり」

  • 誕生日によせて

     「七十代最後のお誕生日だね、まあめでたい、というものか・・・」と時枝さんが庭に咲いていたというバラの花三本と、鳩居堂の葉書箋とをもってきてくださった。ピンク色のきれいなバラには朝の露がついていた。

    英美ちゃんからは実家が花屋さんだけに、例年決まっての大きな花束。今井さんは四十年来ずっとつづいているお赤飯のお重、南天の葉が載っている。駒ちゃんは山好きのおつれあいさんが昨日わざわざ山にいって採ってきたという貴重なむらさきしめじ五本、茂木さんは丹精の栗の渋皮煮、玄人はだしに上手に煮てある。子どもや孫たちからも、それぞれのものが送られてきている。メールが入ったり、ハガキが届いたり電話がきたり・・・みんなよくまあ誕生日を覚えていてくれて・・・ふとこぼれそうになる涙(大げさかな、でもホントです)加山雄三の歌の文句ではないが”シアワセだなあ”である。

     この日の最大のプレゼントがあった。それは大腸検査の結果が<マル>だったこと。毎年行っている人間ドックで引っかかり、その検査日が今日の誕生日だった。もしかして?と頭の隅っこで多少の不安をもっていたのだが「小さなポリープがありましたけどたいしたことはないです。三年後にまた検査しましょう」との担当医の言葉に、あらためていま生かされている自分を感じた。

     これからは、いえこれからも自分を大事にし、歳を重ねたからこそ気づくこと、この時代だから経験してきた戦争というもののおろかさを次代に伝えていかなくてはーその役目がある、としみじみ思ったことだった。